平成25年秋、縁あって初代店主、小林源次郎が明治15年に製作した仏壇を修理する機会をいただきました。数えること130年以上前の仏壇になります。
　そのお宅の御歳82歳のご主人様曰く「私が高校から大学に進学する頃、仏壇を修理した記憶がある。その当時、大学に通う若者は村では少なく、先祖の土地を手放して学校に通わせていただいた。だから毎日、朝夕、仏壇に手を合わせるように躾けられた」としみじみ語っていました。　仏壇は表側に出ている雨戸と障子はかなり痛んでいましたが、幸い木地自体はほとんど虫食いも無く、まだまだ今回手をいれれば大丈夫な状態でした。修理した仏壇は、子どもや孫のいるお宅へ納品することで、今後また何十年と引き継いでいかれます。
　そのような話から、顔なじみのお客様からは「あんたの仕事はやめたらあかんよ」と何度か言われることがあります。思い返してみれば、戦争や三河地震で物資が不足している時代や、逆に高度経済成長による心の貧困な時代も、その時代時代の店主が『正直な姿勢』と『確実な仕事』を信用に変えて看板を引き継いできてくれました。
　私はこの蒲郡市に根を張って看板を掲げていくにあたり、お客様がご先祖様を敬う姿勢を、お子さんやお孫さんにまで継承していくことへのお手伝いこそが、地域社会に必要とされている仏壇店の使命だと考え、感謝の心をを忘れずに日々精進してまいりたいと思います。